東京地方裁判所 昭和43年(ワ)6074号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕<証拠>を総合すれば、原告の代理人である弁護士野村次夫、同池田紘は、当初被告マスのみを被申請人として本件仲裁手続を進めてきたが、本件建物は被告らの共有に属し、本件建物建築工事の注文者も被告ら全員であつたと被告らにおいて主張するかのような言動が窺われたので、昭和四二年八月七日付書面をもつて審査会に対し被告マスを除く他の被告らをも被申請人とする旨の当事者追加的変更の申立をしたところ、本件仲裁手続の当初から被告マスにより同仲裁手続追行に関する代理権を与えられ、同被告の代理人として仲裁手続に関与してきた弁護士大島英一は、同被告を除く他の被告らを代理して、右書面の交付を受けたうえ、同年八月三一日の第七回仲裁手続期日において、右被告らが仲裁手続の当事者として追加されることには異議がない旨答弁したこと、そこで、直ちにその頃右被告らは本件建物建築工事請負契約締結当時の前記経緯に鑑み、当初から被告ら全員が右請負契約の注文者であつたと認め、本件仲裁手続に被申請人として応ずることとし、その手続進行方を右大島弁護士に依頼し、同弁護士にこれに関する代理権を授与した(なお、被告マスを除く他の被告らの大島弁護士に対する委任状は同年八月三一日付で作成され、同年一一月二〇日審査会に提出された。)こと、大島弁護士は被告ら全員の代理人として同年九月二八日付補充書と題する書面で審査会に対し、被告マスを除く他の被告らが仲裁手続の当事者として追加されることには異議がない旨陳述し、爾後昭和四三年二月一二日本件仲裁手続終結に至るまで、各仲裁手続期日において、仲裁人の面前で、原告代理人出頭のもとに、原告と被告らとの間に仲裁契約がないとの主張を提出することなく、本案の弁護をなしてきたことが認められ、右認定に反する証拠はない。しかして、当事者双方が仲裁人の面前で、仲裁契約不存在の主張を提出することなく、本案の弁護をなした場合は、特段の事情のない限り、その目的となつた紛争について仲裁契約が黙示的に締結されたものというべきところ、他に特段の事情の認められない本件では、右認定の事実関係からして、原告と被告マスを除く他の被告らとの間に本件仲裁判断の対象となつた前記請負代金請求の紛争に関しては審査会の仲裁によつて解決する旨の仲裁契約が黙示的に締結されたものと認めるのが相当である。
してみれば、原告と被告らとの間には本件仲裁判断の前提となる仲裁契約が存在したといわなければならないから、被告らの右主張は理由がないことが明らかである。
(輪湖公寛 白石嘉孝 玉田勝也)